僕は2018年1月、南インドのゴアのビーチで野良犬に咬まれた。バックパッカーならば、海外で犬に咬まれることのヤバさを知っているだろう。そう、「犬に咬まれること=死ぬかもしれない」ということを。
ザバルダスト神田
インドは狂犬病大国だ。
インドは世界で最も狂犬病の犠牲者が多い国だ。インド国内で年間2万人以上が、狂犬病で命を落としている。どんな街にも犬が闊歩していて、昼間は可愛い姿に思わず和んでしまうが、夜は野生の狼のごとく凶暴化し、人間に咬み付いてくることがある。狂犬病は発症すると、致死率ほぼ100%の病気で、歴史上発症後に生き残った人は数人しかいない。
犬が街に溢れている理由は、宗教上殺生を嫌い、法律でも動物の殺処分が禁止されているから。一方、ここ日本では野犬がほとんどいない。理由は、保健所などの団体が飼い主のいない犬を保護しているから。年間で1.6万匹を殺処分しているというのも理由の一つ。動物の殺処分の議論はここでは避けるとして、とにかくインドでは犬を含む動物の接触に気をつけなければいけないのだ。
インドのビーチで犬に咬まれた。
新年の雰囲気が漂う南インドのヒッピーの聖地ゴアで僕はインドに咬まれた。僕は今でも狂犬病発症の恐怖と戦っている。狂犬病の潜伏期間は数ヶ月、長いケースでは数年とされており、咬まれる場所や度合いによって潜伏期間は変わってくるからだ。僕は太ももを咬まれたので、まだ狂犬病発症の確率はゼロではない。たとえワクチンを事前に打っていたとしても、発症の確率は低下するが、必ず発症のリスクは無くなるわけではない。
ゴアはたくさんのビーチがある街で、多くの観光客を集めるインド屈指のリゾート地。インドではリゾート地であろうと、終日ビーチには犬が徘徊している。そして夜は犬は縄張り争いのためか、犬同士喧嘩し、吠えあっている。インド日常の風景だった。
(写真:犬がいることは当たり前なので、もはや誰も気にしない)
友人と夜のビーチで横になりながらだらだらしていると、ある一匹の野犬がとつぜん僕の太ももに咬みついてきた。一瞬の出来事で何が起きたか、状況を理解することが当時できなかったが、太ももに痛みを感じたのは今でも覚えている。近くにいた観光客は「ただじゃれているだけだよ」と慰めてくれたが、気が気じゃなかった。
咬まれたあと太ももを目視すると、暗くてあまり見えなかったが、血は出ていなかったようだ。出血の有無は非常に重要である。なぜなら犬のキバに付着した唾液に狂犬病のウイルスが含まれており、そのウイルスが人間の傷口の粘膜に付着することで感染に至るからだ。その日は少し取り乱したが、出血がないということで、狂犬病の心配はなくなり、床に就いた。
翌朝起きて、ふとズボンに血のシミがついているのを発見した。その場所は噛まれた太ももの部分だった。絶望した。咬んだ犬が狂犬病だったら、僕は死ぬかもしれないと。通常、曝露後すぐに狂犬病ワクチンを打つ必要がある。当時滞在していたゴアのアランボールという町の小汚い病院に駆け込んだ。死ぬかもしれないという状況なのに、病院は外まで行列ができていて、整理券をもらって、結局半日待たされた。
写真:インドで買ったワクチンのパッケージ)
曝露後24時間以内に狂犬病のワクチンを摂取を受けられた。幸い3年前に狂犬病の予防接種を受けていたので、曝露後3回の予防接種で済んだ。(暴露後0日後と7日後と14日後)。海外保険は入っていなかったが、インドの診療や薬は激安なので、1回のワクチン摂取で500円もかからなかった。
犬に噛まれた思ったこと。
(写真:インドで見つけた可愛いイヌ)
インドに行くなら、狂犬病のワクチンを必ず打とう。自らの経験から自信を持って言える。犬に噛まれたことがある日本人にもたくさん会ったきた。奴らは忘れた頃にとつぜん襲ってくる。
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